専修人の本_2022年度

2022年度 新刊紹介

ニュース専修2023年11月号_校友の本_?新崎和治さん
市井の読書論
発売日 2023.3.31
著 者  新崎 和治著(昭44経済)
発 行 日比谷出版社
価 格 税込1,650円
本書は、生粋の読書人である新崎和治さん(昭44経済)が、かつて暮らした町や旅した土地の思い出とともに、本との出会いを記した読書録である。バルザックの『谷間のゆり』の美しい文章に心を和ませ、福沢諭吉の『福翁自伝』を読んで人生に思いをはせる。古今東西の名著を巡る著者の自由な思索の跡をたどり、読書の楽しさと奥深さを味わうことができる。
「読み手は書き手に寄り添い、作家の創造の『真実』までの道のりを探りたい。そのことを本来『読書』と言うのではないか」「読書は味わうように遅読がいい。老境にある今、『熟読玩味』がなおいい」などの読書論に深くうなずく読者も多いことだろう。読書への尽きぬ愛にあふれた一冊だ。
ニュース専修2023年11月号_校友の本_?蒲章則さん
心霊科学辞書 和英/英和
発売日 2022.12.5
著 者 蒲 章則著(昭51法)
発 行 東洋書院
価 格 税込7,700円
著者の蒲章則さん(昭51法)は卒業後、複数の大学で国際法、医学、国際保健学などを修め、医学博士の学位を取得。WHO(世界保健機関?SEARO)官房長を経て、ハワイ大学医学部アドバイザー、群馬大学多職種連携教育研究研修センター(WHO協力センター)の特別教授などを務めている。
開発途上国で医療協力活動に従事する傍ら、現地土着の宗教や風習に触れ、聖地や霊能力者を訪ねることをライフワークとしてきた。その経験を生かして編まれた本書は、和英と英和の二部構成で、心霊科学を中心に精神衛生学、宗教学、オカルト分野などの用語を広く収録している。
欧米諸国と比べて、日本における心霊科学の学術レベルは十分とは言えず、良書も限られるなか、初心者から研究者まで幅広い心霊学徒の学びを大いに助ける一冊となる。
5面専修人の本
子どもたちの命と生きる―大川小学校津波事故を見つめて
発売日 2023.2.16
編 著 飯考行
発 行 信山社
価 格 税込2860円
本書では、2011年3月の大川小学校津波事故から12年(十三回忌)を機に、遺族10人余を含む関係者五十数人が、それぞれの視点から、事故とその後の経過をたどり、心情、考察のほか、地域の営みや今後の防災のあり方をつづっている。事故後は、校舎の解体についてや提訴をめぐって賛否両論あり、遺族の対応も分かれた。裁判は、悲嘆にくれる保護者の「なぜ子どもの命が失われたのか」という疑問が、石巻市?市教育委員会の説明会と事故検証委員会で十分解消されなかったことによる、やむをえない選択であった。原告遺族たちは、「子どもの命をお金に代えるのか」といった中傷を浴びながらも、弁護士ととも に裁判に取り組んだ。裁判官が学校関係者の証人を厳しく問いつめ、行政の対応に傷ついてきた遺族が、司法の「寄り添い」に涙する場面もあった。5年半ほどを要して確定した判決で、原告の主張はほぼ認められ、津波の事前の備えに落ち度があったことが認められた。大川地区は、震災の傷がいまだ癒えないものの、時を経て、悲しみ、傷つき、対立、祈りから、命の大切さを育み、回復する段階に入りつつある。震災遺構として残された校舎では、遺族が語り部を行い、多くの人が来訪している。本書を通じて、大川小学校の事例をさまざまな角度から見つめることは、子どもを亡くす悲しみを共有し、その命をせめてもの教訓として、私たちが事故や災害に対応していかに生きていくべきかを考える礎となろう。
編著者(いい?たかゆき)=法学部教授。法社会学。
専修人の本(校友)
詩集 ひとりゆく思想
発売日 2022.8
著 者 前田巌(昭50文)
発 行 砂子屋書房
価 格 税込2200円
前田巌さん(昭50文)の4作目となる詩集。表題作をはじめ、その時々の心の動きを表現した30編を収録した。
前田さんは高校時代から詩を書き始め、専大在学中は仲間とともに同人誌を発行。卒業後は詩誌の刊行にも携わった。

専修人の本?上村妙子教授著
身近な異文化コミュニケーション  ―こころにユニバーサルデザインを―
発売日 2022. 4.15
著 者 上村妙子
発 行 パレード
価 格 税込990円
「異文化コミュニケーション」はマクロな視点とミクロな視点から捉えることができます。通常、私たちは「異文化コミュニケーション」と聞くと、「日米異文化コミュニケーション」など日本文化とアメリカ文化というように、二つの国の文化を対象としたマクロな視点からの研究を思い浮かべます。一方、一つの文化も、ジェンダー、年齢、職業、出身地など「異文化性」を持つ多様な集団から構成されています。
本書では、ミクロな視点に立ち、日本の中に見られる多様な属性を持つ人々を取り上げています。具体的には、マイノリティーと考えられている女性、LGBT、在留外国人等の人々について、こうした人々の潜在的な特性や社会の取り組みを論じています。
最後に、私たちがそれぞれの違いを認め、より生きやすくなるためのヒントとして「ユニバーサルデザイン」の考え方を紹介しています。
著者(かみむら?たえこ)文学部教授。専門は応用言語学、英語教育。

校友の本?大澤史伸さん著
市民活動論 ボランティア?NPO?CSR
発売日 2022. 4.30
著 者 大澤史伸(平9院文修)
発 行 学文社
価 格 税込2,200円
東北学院大学教養学部准教授で、社会福祉論が専門の大澤史伸さん(平9院文修)が「市民活動」をテーマにした新著を上梓した。
現代の複雑化した社会問題を解決するためには、「公的セクター」「営利セクター」「民間非営利セクター」による連携?協力が欠かせない。その担い手として期待されるのが「市民」であり、本書は市民が主体的に行う活動に焦点を当て、学術的考察を試みるものである。
「ボランティア論」「NPO論」「CSR論」の3部構成で、それぞれの概念、歴史、現状、課題を詳述。社会福祉法人や学校法人を対象に行った調査?研究の記録も収められ、参考になる。
ボランティア活動に携わったことをきっかけに福祉の道に進んだ大澤さんは、社会で起きている出来事を自分ごととして捉えて関わりを持つことの大切さに触れ、「活動を通して、自分が今まで知らなかった世界に触れるだけでも、その人自身にとっては貴重な経験になる」と説く。

専修人の本?河野真太郎
新しい声を聞くぼくたち
発売日 2022. 5.26
著 者 河野真太郎
発 行 講談社
価 格 税込1,980円
#MeToo運動など、新たなフェミニズムの運動が私たちの社会を変え始めているように見える現在、もっとも大きな変化が求められているのは男性のあり方であるかもしれません。本書は男性運動、男性学、男性性研究のこれまでを踏まえつつ、男性性はどのような新たな時代性に直面しているのか、それがいかなる分断を生み出しているのかといった疑問を、映画、漫画、アニメ、小説などの文化的な作品の読解を通じて考えるものです。「有毒の男性性」、障がい、コミュニケーション能力、イクメン、ケアなどをキーワードに新たな男性性を探究します。
著者(こうの?しんたろう)国際コミュニケーション学部教授。英文学?文化研究。
専修人の本?尾木研三
AI審査モデルの基礎知識  ― モデルのしくみと信用リスク管理 ―
発売日 2022. 5.23
著 者 尾木研三
発 行 一般社団法人金融財政事情研究会
価 格 税込3,080円
AI審査モデルは、企業の信用リスクを評価する人工知能である。評価結果は信用スコアで示され、スコアに応じて融資の可否、金利や金額などの融資条件を自動的に決 定する。フィンテックの一分野であるオンラインレンディング(融資)の中核を担う技術として注目されている。本書は、そのしくみについて「文系でもわかる」をキーワードにわかりやすく解説している。
著者は、政府系金融機関のリスク管理部で長年AI審査モデルの開発に携わってきたキャリアの持ち主である。AIの実力を正しく知ることができると同時に、信用リスク管理の基本的な知識と実務への応用力が養える。学生にもわかりやすい良書となっている。
著者(おぎ?けんぞう)商学部准教授。企業のリスク評価。
専修人の本?岡田憲治
政治学者、PTA会長になる
発売日 2022. 2.25
著 者 岡田憲治
発 行 毎日新聞出版
価 格 税込1,760円
著者は、幸福のための任意団体であるはずのPTAが、苦しみと不安の半強制組織となっていることに義憤を持ち、子どもの小学校のPTA会長になった。 PTA体験は、個別地域の条件設定に留意してこそ意味を持つが、これまでは「男性会長」というジェンダーバイアスに依拠し、成功体験を謳う「特殊事例紹介」が大半であった。
しかし、筆者は本著を、PTAを「やり過ごす」ためのマニュアルではなく、現状の告発でもなく、政治学的視角からの「自治の問題提起」の機会とした。 それゆえ自らの失敗を糧として、「正論を突きつけ孤立する」のではなく、生活技法として身体化された自治を、葛藤の中から獲得した過程が綴られている。
素材はPTAであるが、日本のあらゆる社会組織に貫徹する問題と、それとの格闘のヒントが本書にはある。
著者(おかだけんじ)法学部教授。政治学、デモクラシー研究。
専修人の本02嶺井名教授編著
共に創り出す公教育へ―社会知性を身につけた教師として―
発売日 2022. 4.13
編 著 嶺井正也?森田司郎?福山文子
発 行 八千代出版
価 格 税込2,750円
本書は本学教職課程の授業用テキストである。文科省が示す教職課程コアカリキュラムに沿い、中教審答申(「足球365比分_365体育投注-直播*官网の日本型学校教育」の構築を目指して)も踏まえた構成になっている。 「子どもの権利の視点」を大切にする教員の育成を目指し、インクルーシブ教育に関わる特論等を掲載している点、コラム欄では本学出身の教員や社会福祉関係者が教職をめざす後輩へメッセ ージを寄せている点に特徴がある。
副題には本学の21世紀ビジョンに即し、地球的視野を持ち、人間?子ども理解を深め、実践力のある教員になってほしいとの願いを込めた。
編著者(みねい?まさや)名誉教授。教育政策?教育行政。
   (もりた?しろう)法学部教授。教育課程論。
   (ふくやま?あやこ)経営学部准教授。教育政策?教育行政。
    ほか、本学卒業生が多数執筆。
専修人の本01井上教授著
聖ヤコブ崇敬とサンティアゴ巡礼― 中世スペインから植民地期メキシコへの歴史的つながりを求めて
発売日 2022. 3.30
共 著 井上幸孝
発 行 春風社
価 格 税込4,400円
本書は、共著者が代表者を務めた共同研究(科研費JP17K02037、2017~21年度)の成果をまとめたものである。聖ヤコブ(サンティアゴ)を軸に、中世イベリア半島から大航海時代以降のアメリカ大陸 (主にメキシコ)までを扱っている。従来の個別研究ではカバーしきれなかった広範な時間的?地理的範囲を対象とし、時代と地域を越えた歴史的展開を追ったものである。
中世スペインにおける聖ヤコブ崇敬の始まりと巡礼の最盛期、中世後期から近世初期にかけての王権や貴族と聖ヤコブ崇敬の関係、メキシコにおける聖ヤコブ崇敬定着の過程や問題点を論じた六つの章からなり、五つの コラムも収められている。
共著者(いのうえ?ゆきたか)国際コミュニケーション学部教授。メキシコ史?メソアメリカ史。
2022専修人の本(経営?目黒良門教授)
戦略的マーケティングの基本演習12講
発売日 2022. 4.20
共 著 目黒良門
発 行 学文社
価 格 税込2,860円
情報技術の発展と普及に伴い、今日様々なマーケティングツールや分析手法が開発されている。とは言え、いかにマーケティング情報技術が進化しようとも、市場適応のための全社戦略を考え、責任を持って判断を下す事が人間の仕事であることに変わりはない。
本書は、戦略的マーケティングの本質を理解し、これを実務上の意思決定に生かすための指針となる演習本である。同時に、戦略的マーケティング研究における学術成果も随所に盛り込み、実務とアカデミア双方の視座から立体的に戦略的マーケティングを習得することを狙いとしている。講義?ケース?演習という構成になっており、実例やケースを踏まえつつ、自分の頭で考えながら基本概念の理解と定着を図ることが出来るように配慮されている。
著者( めぐろ?らもん)経営学部教授?マーケティング入門
専修人の本?長谷川講師著
哲学する漱石 天と私のあわいを生きる
発売日 2022. 4.20
著 者 長谷川徹
発 行 春秋社
価 格 税込4,620円
本書は、明治期における最先端の「思想家」夏目漱石がいかにして思想したのか、漱石があゆんだ精神の地誌をなぞり返している。とりわけ、漱石が文芸を通じて思想した「自己本位」と「則天去私」との相克という難問にねらいを定め、二者が高次に相即するさまを跡づけている。
「近代自己」のエゴイズムの籠絡から遁がれることはいかにして可能か。また、「自己本位」を生きる「自己」がいかにして「天に則して私を去る」のか。そうした視角に立ち、「則天去私」とは何であったのか、逆に何ではなかったのか、その思索の内的理路を明らかにし、「自己(私)」と「天」とのあわいを哲学する漱石の苦闘を追うことで、近代日本における「超越」の思想課題をも問い直している。
著者(はせがわ?とおる)文学部兼任講師。日本倫理思想史。
専修人の本?澤教授著
私たちは学習している 行動と環境の統一的理解に向けて
発売日 2021. 12.10
著 者 澤幸祐
発 行 ちとせプレス
価 格 税込2,750円
人間や動物は、時々刻々と変化する環境にあわせて柔軟に行動を変えて生きている。心理学において人間や動物の行動変容は主に学習心理学という分野で扱われており、「経験によって生じる行動の比較的永続的な変化」という定義に従えば、学習研究の射程は「勉強」 にとどまらない幅の広さを持つ。
本書では、学習研究の歴史的経緯を踏まえつつ、連合学習理論に基づいて環境と行動の相互作用である学習という現象を統一的に見通す視点を、初学者向けに解説した。あわせて、人工知能研究華やかな現代にあって「泥にまみれて生きる生物のこころ」をどう捉えるべきかについて、学習研究の視点から考察を 加えた。体系的な教科書ではないが、学習心理学の入門書、あるいは副読本としてご一読いただきたい。
著者(さわ?こうすけ)人間科学部教授、学習心理学、動物心理学。